営火の名優たち
キャンプをすれば、夜は火を囲み、キャンプ・ファイヤーとなります。
以前は、リーダーを含めて40人ほどの輪になりましたが、現在のハチスは、
どんな営火をやっているのでしょうか。
当時は、まず「遠き山に」の歌を歌い、薪の山に火を点けていました。
そして、「ジャンボリー」など、元気な歌で雰囲気を盛り上げます。
ここで重要なのは、隊付リーダーの役目です。火を囲むスカウトの後に回って、
班長に、次の出番の準備を促していました。
ある班が歌を歌えば、次の班にはスタンツの準備をさせるのです。
当時はスタンツという言葉はありませんでしたが、寸劇のことです。
キャンプ期間中、毎晩営火があるので、どんな劇を演ずるか、
それを考える班長は大変でした。
創始者ベーデンパウエルは、少年時代から、舞台の上で演ずるのが好きで、
スカウティングの中にも、演劇を取り入れることを奨励していました。
そのため、指導者訓練の実修所でも、営火での寸劇は重要視さていました。
寸劇といっても、「猿カニ合戦」や「浦島太郎」、「桃太郎」など、
誰でも知っている童話などを演じていました。
指導者たちも、手本になる劇をと、能、狂言などを参考にしながら、演じて見せました。
最近は「語りべ」といって、昔話、民話などを語り継ぐ会が行われています。
こうした話に関心を持ち、寸劇として演ずると楽しいと思います。
ハチスが誕生したころは、芝居の上手なスカウトもおり、
創作劇も演じたりして、営火を盛り上げてくれました。
あんこ屋の長谷川昇一郎君や大善屋の畑和男君、
西蓮寺近所の鈴木信一君など、 見事な演技をする名優たちを想い出します。
営火で大切なのは、指導者による夜話です。
何も教育的な話でなくても、指導者の体験談や失敗談でも良いのです。
心を込めて話す態度が重要なのです。
初めてキャンプに参加した新入隊員は、全てが不安なのです。
特に、親から離れて夜を過ごすのは、大変淋しく思っているはずです。
その気持ちを癒してあげるのも、営火の大きな目的なのです。
そして、大声で、歌って踊った興奮を、テントの中に持ち込まないようにして、
静かな気持ちで眠りに就くように配慮することが大切なのです。
炎が静まり下火になったとき、ハチスでは必ず「一日の終り」を歌い、
会津若松の方向を向いて、「お父さん、お母さん、お休みなさい」と唱え、
静かに営火を終えていたのです。
平成30年11月5日
ハチス団委員 赤城良一